今回は「認知症サポート医」についてです。
一般にはまだまだ知られていない言葉ではないかと思います。実際、私自身もその詳細を研修で再確認出来ました。
「認知症サポート医」とは、厚生労働省の認知症地域支援事業の一環として、認知症の正しい知識や治療法などを「地域のかかりつけ医」や「認知症患者様のご家族」などに助言していく立場の医師になります。その他重要な役割として、認知症に関わる他業種(地域包括支援センターなど)と地域の医療機関の連携をスムーズに行う推進役です。
平たく言うと、「認知症サポート医」とは医師の先生であり、患者様を取り巻く家族、社会環境をトータルに整えるプロデューサーやコーディネーターと言ったところでしょうか。
私が参加した今年初めの認知症サポート医研修は、全国から200人以上の医師が集まり2日間に渡って行われました。印象に残った点は半数以上の医師が、私も含めて現在、認知症の診断、治療を積極的に行っている専門医が多かったところです。(研修前の印象としては、あまり認知症治療に積極的ではない医師が自身の能力向上のために受講する感じなのかと勝手に想像していました。)日本では高齢化が急速に進み認知症を発症する人が右肩上がりの増えており、ご家族だけで介護をするという事が厳しい環境になっています。このため、地域全体が認知症の患者さんとその家族を支える環境作りが大切になってきます。その中心で、診療から環境までを広くサポートする医師。あらためて重責を痛感しました。
また、この「認知症サポート医」は、圧倒的に数が足りていません。現状、全国でも約3,200人程度、神戸市では20数人程度とのことです。(平成25年現在)
当院にも2人暮らしのご夫婦がそろって認知症を発症し、通院されている患者さんがいます。このような場合、最終的にはどちらか一人もしくは二人とも長期入所出来る施設に入所する事が多くなります。やはりご本人にとってみれば、住み慣れた家に最後まで居たいと思うのが本音だと思います。
このようなケースを普段診療で見ていると、もっと積極的に何かサポート出来る事がなかったのか疑問に思う事が本当によくあります。
私には、こんな気持ちからの認知症サポート医研修受講でした。
地域の認知症に関わるいろいろな業種の人たちに認知症の正しい知識を広め、一般の人達にも認知症について正しい認識を持ってもらうことにより、認知症の人達やその家族が住みやすい環境を作ることがこれからの認知症治療にとって一番大事な点だと思います。
これからは微力ながら認知症サポート医としてまた認知症診断、治療の専門医として
地域医療に貢献できればと思います。